風立ちぬ 感想

2017年10月15日

宮崎駿の風立ちぬを見た。
泣くとはいかないまでも、
心にたくさん何かを訴えかけてくる不思議な映画だったので、
感想をダラダラとしたためておく。
まず冒頭の二郎少年の夢
軽快に鼻高々に飛ぶ少年に暗い影が押し寄せる
バクダンみたいのがウネウネ
で、なんか気持ちの悪い巨大戦艦が!
このあたりの不気味さというか、演出のユニークさがなんだかとても秀逸。
この映画への期待が膨らむ。
二郎少年の家はどうも裕福らしい。
二郎なのに兄の影はない。あ、兄の辞書を借りるって言ってたような…
綺麗で抱擁力のありそうな母親。
生意気な妹。
父は会話の中でしか登場しない。
が、なんとなく立派な父親なんだろうと想像する。
二郎少年がカプロー二出会い、設計士になることを誓うエピソードは良い。
都合の良い夢を見たとも言えるが、
夢に確信が備わるとそれは実現するのだろうと感じた。
時は移り上京する汽車のシーン。
まず二郎青年の声に違和感をおぼえる。
時期になれるが、ジプリはいつから素人声優を起用するようになったのだろう…
で、菜穂子との出会い。
ドイツ語でのありえない掛け合いは、まぁ映画だから許そう。
この時に二郎が菜穂子を好きになったと後に告白するが、それはないやろーってツッコンでおく。まだ菜穂子は10歳くらいよね?
で、地震のシーンがあるが、これまた圧巻。
地震の恐怖を見事に表現している。
線路がウネるところなんか、こんな演出みたことないって思うくらい秀逸!
それからもうめき声のような音が響き、
そこに居る人の恐怖心を不気味なまでに表現している。
老いても宮崎駿の存在感に圧倒されるシーン。
それから2年後に二郎の学校にお絹が来るシーン。
二郎は会いたかった素振りをするが、お絹に会いたかった様に思ったけど、本当は菜穂子に会いたかったのかな?
就職して名古屋へ
いきなりバリバリ仕事ができるあたりは、
凡才じゃないのねってかんじ。
ドイツに行けばドイツ語ペラペラ。
こんなエリートってええなぁ〜なんて思う。
国家間の工業レベルの差に苦悩するか…
自分の悩みがちっぽけに思えるが、人より優れた才能に恵まれても、やはりそこには他者との差に悩む人の姿があった…
人は他と比べたがる。悲しいサガやね…
それが進歩の原動力か。
二郎の亀のままじゃだめなのかな的なセリフは、なんかとても共感できた。
うーん、周りの雑音に右往左往せず、信じた道を黙々と歩んで行ける亀になれたらさぞ良いのになぁ…
で、世界を見てこいって事だ。なんて言われる存在になりたい!
って、やはり私は周りの風評とか気にしすぎやから亀になれなさそう…
で、入社5年目にして大きなプロジェクトを任される。
出世街道まっしぐらな彼。羨ましい…
だが、そのプロジェクトは奇しくも失敗に終わる
唐突に避暑地のシーンに行くから、何が起こったのかパニクった。
夢の続きか、シーンが変わったのか、コロコロ移るので一瞬ついていけない
これは意図的?
避暑地でやっと菜穂子と再会
美しく成長した菜穂子に惹かれてお付き合い、
ならまぁわかるんだが、まいっか。
再会のシーンとか紙飛行機のやりとりとか、
退屈ではないが、私的にはサラサラと心地よく流れていった感じ。
彼女は結核かぁ。そのパターンか。
二人で苦労をともにしながら、殺戮兵器をつくってしまう罪悪感に悶絶しながら、それでも彼の才能はゼロを作らずにはいられなかったのであった…的な話なら泣けたと思うがなぁ。
病気の悲劇は確かにその不条理さが痛いんだけど、なんとなく安直なように思った
結婚式の儀はなんかええ感じやったなぁ
初夜の表現もジブリの冒険って感じで新鮮。
そっからの結婚生活はまるで嘘っぱちや
仕事に打ち込む夫
傍で静かに見守る妻
夜中になってやっと帰ったと思ったら
寝ずに仕事を続ける夫
それを見守る妻
これ美しいか?男の幻想よ、こんなもん。
病床で1日夫の帰りを待ち続けて、
まだ仕事されたら女性ならキレるんちゃうかな、普通…
病床の脇でタバコをふかす無慈悲な夫
夫婦は双方の思いやりでやっと成立する関係じゃないと長く続かないっしょ
美しい所だけ見せたかったのね、
ってこれで泣けるか!って感じ。
そんな刹那の関係は、まだ恋人であって夫婦じやないわな。
駿は女性の健気さを表現したかったんやろね
とりわけ少女の健気さか?
いや母性的なものへの渇望を感じる
ロリコンと思わせといて、実はマザコンなのかもしれないね
徹夜で帰った二郎に小言も言わずニコニコして布団をやさしくかけてあげる…、これってオカンやん!
とまぁ二郎と菜穂子の結婚生活のとこは、
悪くはないんだが、趣向の違いからかグッとくるものがなく進む…
二郎が若手を集めて勉強会するシーン、あれ良いね。最後に上長たちが面白かったな、感動しました。ってとこが好き。
でも、機関銃を載せなければ云々言うセリフはいらんわ。
俺たちは死の商人じゃない、的なセリフもふーんって感じ。
だって彼らの葛藤が全く描かれてないんだから、そんなテキトーな台詞ではなんも伝わりませんってば。
ラスト。
あれが君のゼロか
良い台詞
最後はズタズタでしたが、はスカスカで重みがない
で、菜穂子が生きて、二郎ありがとう…
うーん、泣けないよねこれでは。
なんやろ、綺麗なシーンやねんけどなぁ
やっぱ夢を叶えた嬉しさと、戦争に加担したという罪悪感との狭間で悶え苦しんで、やっぱ夢を追い続ける事しか僕には出来なかったんだ、っていう後悔やら達成感やら菜穂子への申し訳なさとか、本来ならもー色んな感情がグチャグチャになってドロドロと倒れそうになりながらも、生きてといわれてその言葉に支えられるようにヨロヨロ立ち上がるくらいのシーンじゃない?
それが綺麗過ぎるのよ。人間臭さがなさすぎ。
それでも、なんか観終わった後にイロイロな想いが揺れるから良い映画やと思う。
数年に一度は見返すであろうマイフェバリットな一本になりそうです。
やっぱ、超天才エリート青年だから感情移入できなかったのかな、
オネアミスの翼のシロツグには感情移入しまくって、最後は泣いてしまうんだけど。
そうそう書き忘れてたエピソードがあった
シベリアのくだり
あれなんかうまそうやね
で、本城と議論になる
自己欺瞞だ的な批判を受ける
飛行機という贅沢な夢と、食べるのにも事欠く貧乏な日本
このエピソードはオネアミスで既出だから、
まぁ好き系やけどグッとくるもんはない
けど、本城がやたら口にする これも矛盾だ のセリフは好き
まぁこんな所でお開きにしよう