それいけ!タボリーマン

北野武「キッズリターン」 いろんな感情が渦巻くから、良い映画なんだろうね…

おすすめ映画でググったら、この「キッズリターン」がいろんなサイトでオススメされてたので観てみた。なお、プライムビデオでは無償公開されておらず、ゲオの宅配レンタルのお世話になった。

冒頭の映像と音楽を観るにつけ、噂に違わず名作の雰囲気がムンムンしていた。とくに久石譲の打ち込み系な音楽がたまらなく良い!

そして全く先の読めない展開。冒頭で二人の未来を垣間見たとはいえ、そこに至る道程はまったく未知なので、どうやって冒頭のシーンにつながるのか終始ハラハラドキドキしながら観れた。

定期的に見返す映画になることは決定なんだけど、主人公の二人が挫折を味わう展開は「そら自業自得じゃね?」って思う節もある。必死にもがいてなお挫折する、そんな展開なら涙がとまらん!という感情の爆発に至るだろうが、なんか安直なんよねあの二人は。そこがなんか気に入らない。

が、たぶん何をどう頑張れば良いのかすら見いだせないくらい、大きくこじれてしまった少年の悲哀のストーリーなんだろうね。こじれる要因は多くを語らず、見る人の想像にお任せというのも、映画としての懐を深くしているのだろう。

でもやっぱり…

といった感じで、どうしようもない二人はやっぱりどうしようもない未来しか待っていなかった、という切ないストーリーである。マサルがボクシングで頭角を表したシンジの足を引っ張らず応援する姿には、真の友情を垣間見たけれど…。

んで、ラストシーンの二人の掛け合いに救いがあるなんてよく書かれてるけど、私的にはあんま響かなかったなぁ。

必死にもがいて自分ではコントロールできない運命に翻弄され辿り着いたラストシーンなら、あのセリフは活きてくるように思う。

しかし、そんな浅い感じではなく、どんなお粗末な失敗でもすべては人生の糧になる!人生に無駄なことなど一つもない!と教えてくれているのだろうか。単に強がって未来に希望があるとすがっているだけなんだろうか。このセリフは解釈がとても難しい…

そして、この映画ではマサルとシンジ以外の人もことごとく不幸な道へ誘われている。

例えば、タクシー運転士になった彼、ヤクザの親分、殺人の罪をきせられる中華屋の息子、ボクサーのイーグル、ボクサーの悪い先輩、など。

ただ唯一その負のスパイラルから逃れた奴らがいた。それは漫才師を目指した彼ら。途中はガラガラの観客席にむかって漫才をするが、ラストシーンでは満員になっている。これは何を意味するのだろうか…。不器用でも積み重ねれば大成すると言いたいのか?そんな単純な話ではなさそうやし。これもまた難しい。

そんな感じで、色々な感情がわき出てきて消化不良のままどこかへ消えていく。そんな映画にはなかなか出会えない。面白いのか、面白くないのか、それさえ判然としない。

ただ、冒頭から映画のタイトルが出てくるまでの、映像と音楽はかなりイケている。

これを観るためだけに何度も観てしまいそうな、そんな魅力に溢れている。よって、私的には噂に違わぬ名作であると結論づけたい。

鑑賞後にモヤモヤしたものが残っても、いやむしろそんなモヤモヤに浸りたい強者よ!これを今すぐ手にとって観てみたまえ。きっと不愉快な気持ちに溺れられること請け合いや。

ブラボー!

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